スポーツマン
町を歩いていたら、店先に見慣れないものが出ていた。
鉄棒の玩具というか、鉄棒を握ったおじさんが三人、
振り子のようなものに合わせて前後に揺れている。
なんだろうと思って近づいて、しばらく観察してしまった。
おっ、一人はぐるぐる大車輪をはじめたぞ。
そばに手書きの宣伝文句が貼ってあった。
「今、売れてます。525円」
よし、買おうと決めて箱をひとつつかみ、店に入ってゆく。なんとその店は、
瀬戸物屋さんだった。皿やとっくりがいっぱい並んでいる。
どうしてこんなものを扱っているのか。
まあ、商品の仕入れルートはいろいろだ。こういうこともあるのだろう。
帰って、組み立ててみた。単三電池が4個ついていた。
箱には「SPORTS MAN」「made in china」と書いてある。
日本語はどこにもない。部品は単純で、台座、振り子、支柱が二本、鉄棒おじさん。
セットが終わって、さっそく振り子をちょっと押してみた。
電池4個で、どうやら台座の中央に電磁石の磁場ができているみたいだ。
それが振り子をひきつけているらしい。
鉄棒おじさんは、支柱にひっかかっているだけで、振り子につながってはいない。
振り子に合わせて、鉄棒おじさんが前後に揺れるが、
すぐに両者の揺れ方にはズレが生じ、おじさんは勝手に蹴上がりをしたり、
前後にすとんすとんと足をつけたり、不規則な動きをはじめた。
いつ大車輪を始めるかと思ってじっと見ていると、
意外にもなかなかぐるぐる回ってくれない。
なおも見ていると、ようやく逆回りの大車輪を一回やってくれた。
あれ、こんなもんか。いやいや、そうではなかった、
突然、まえぶれなくぐるぐる回りだしたのだ。なんと連続十一回!
これは、放っておくと電池が切れるまで動いているのだろうか。
いや、電池が切れても? おじさんの顔には笑みが浮かんでいる。
ま、安上がりな、見飽きないインテリア玩具だが、
その笑顔がちょい不気味かも。(しょっち)
おじさんの手がそのまま振り子の棒になっている。
動きに規則性は……あるのだろうか?
物理に強い人ならもう少し分かることがあるのだろうけど。
何回目に大車輪するか、賭けようか?
なんちゃって、二人で息を殺してじーーっと見ているのも、ばかみたい。
そんな暇ないです!
インテリアにも?…ならんでしょう。
それにしても、「スポーツマン」というネーミングがなぞやねえ。(玉)