熱海

2月16日、熱海でインタビューと撮影。
もうすぐ「文庫書き下ろし時代小説」が100冊を突破する作家のSさんだ。
愛犬ヴィーダと熱海の海岸を散歩する作家にくっついて歩く。
いまのぼくの年齢くらいのときに、あなたの本はもうウチからは出せません、
と通告され、「これからも小説家としてやってゆこうと思うなら、
官能小説か時代小説を書くしかないんじゃありませんか」と言われたという。
それまでの本だってすべて初版どまりだったが、出してもらえるだけ、
ありがたかったのだ。ついにどん底がやってきた。
20世紀が終わろうとする年の、7の月。
まるで悪魔が降臨し、命と引き換えに「栄光」を与えたかのような奇蹟が起きた。
必死で書いて持っていった時代小説が、発売十日目で増刷になったのだ。
大躍進が始まった。年収が数年間でそれまでの百倍以上になってしまった。
こんな作家がいままでにいただろうか。
同時進行する江戸時代を舞台にしたシリーズが10本。
いずれも、読み始めたらやめられなくなる。これから読み始める人は、
少なくとも100日間は楽しめる、ということだ。うらやましい。(しょっち)