句さ枕

坂道を歩きながら、こう考えた。
いま思い出し笑いをしたら、前から歩いて来た人は、
オレのことをどう思うだろうか。
見も知らない男にいきなり得体の知れない笑顔を向けられて、
驚くだろう。そして自分の後ろに知り合いでもいるのかと振り返ったり、
なにげに顔をそむけてしまうだろう。
オレとしても間の抜けた顔をすぐには引っ込めようもなく、
ばつの悪そうな顔に切り替えてそそくさと、あるいはしらんぷりして、
通り過ぎるしかあるまい。
明きらかなのは、自分がいまにも笑いだそうとしているということ、
そして前から人が歩いてくるということだ。
こういう状況は、俳句にならないだろうか?
季語!そうだ、俳句には季語が必要だ。季語を入れなくてはならない。
寒い季節だから、そう、最近首に襟巻きを巻いている。
これを小道具に使えないだろうか。襟巻きは、きっと季語だ。
思わず浮かんできてしまった笑顔を、さっとマフラーで隠す。
いいぞ、襟巻きで笑顔を隠す坂の道?もうちょっと工夫できないか?
マフラーに笑顔を包む通い道
もっとなんとかしたいが、あら、もう会社の入り口に着いてしまった。
ばかは小休止。(しょっち)


不思議なことに私の季語も、今日はコート。
さすが、兄妹。いや、夫婦。
脱いでみて着て見てコート晴れ予報 (玉)