あんず

ある程度大きくなった木の幹をすぱっと伐ると、
その切断面を囲むように新芽がたくさん出てきて、伸び始める。
去年近所の人に伐ってもらったあんずが、まさしくその状態になっている。
上に伸びすぎたのをちょんぎってしまったのだ。
10年位前に苗木で植えたのだが、土の栄養状態がよかったのか、
すくすくと育って、やや手に負えなくなっていた。
それを見かねて、玉が近所の人に頼んだのだ。
元気のいい植物というのは、ほんとにおもしろい。
イノチの流れに素直というのか、幹を上がっていった先が断たれていると、
しばらくそこになにかが溜まるみたいだ。
そうして、あるときいっせいに芽となって吹きだす。
直径数センチの幹がなくなった場所を埋めるかのように、
細い枝が何本も、十何本も空に向かって伸びてゆく。
枝がたくさん出てきたので、いっそ花芽もたくさんついてくれるとうれしい。
冬は、棕櫚が庭の王様だった。
春にはあんずが王座を奪回して欲しい。
そのあとは、しばらくして紫陽花かな。狭いスペースでも、
主役が季節ごとに交代してゆくのを見るのは楽しい。
忍び咲く柳生の里の吾亦紅
なんじゃこりゃ。(しょっち)


枯れ枝にふくら雀の静かなリ  (玉)