遺伝子の話

その場しのぎってけっこう大事だったりする。
とりあえずその場を切り抜けないと、明日がない、みたいなことがあるし。
歴史的にも、そうだったようだ。
黒死病(ペスト)の大流行のときとか、
もっと大昔、突然ミニ氷河期が襲ってきたときとか、
きたない水をどうにか消毒して飲まなければならない、とか。
これらをくぐってきた人類は、そのつど、
そのノウハウを「遺伝子」に残してきたんだって。
それが、危機が去っても人体に残っていたりするから、
話がややこしく、かつ難しくなるらしい。
糖尿病なんかもその一つらしい。
血糖値を高くするのは「不凍」のためだった。
つまり、血液の氷結温度を下げるため。
急激に襲ってきた寒さに対するとっさの対応策。
それが、遺伝子として子々孫々に受け継がれてしまうことで、
糖尿病などというものを世界に広めることになってしまった。
酒を飲めない遺伝子もそうらしい。
アセトアルデヒトを分解する酵素をもたないのは、
世界中でモンゴロイドだけ、しかもそのうちの約半数という。
ヨーロッパでは「アルコール消毒」が主流だったのに対して、
モンゴロイドでは「煮沸消毒」で水を飲むのが主流だったから、だという。
いつのまにか、酒に弱くても平気な体になってしまったのだ。
その酵素をつくる遺伝子が、なくなってしまい、しかもその勢力が優勢で、
どんどん受けつがれ、広がったわけだ。飲むとすぐ赤くなる体質。
てなことが、本に書いてあった。おもしろかったので書き留めておいた。
『迷惑な進化』(シャロン・モアレム、NHK出版、2007年8月刊)より。
まるで戦時で大活躍するイクサビトが平時にもてあまされるみたいな話。
酔い醒めや鼻先に出る蒙古斑 (しょっち)

座して見る万両の実のあかあかや (玉)