途上

夜になってかなり冷え込んだ。
四月の頭に船遊びするからどうぞと誘われたので、
どうせ屋形船のなかで宴会からカラオケになるだろう、
大利根無情と無法松(度胸千両入り)あたりを用意しておけばいいかな、
などとほろ酔いで鼻歌歌いながら帰ったら、
みごとに寒さを忘れていた。駅からの道、身を切るような寒風、
だったはずのに。そうでもなかったのかな。
新宿は人が少なくて、カウンターでひとり、
かれこれ二時間以上も若いママとおしゃべりしていたことになる。
途中、これすごいですよーと見せられたのが、千ページを超える作品集。
大竹伸朗の「全景」という重さ六キロの本だった。
よくまあこれだけのものを作ったもんだと造本に感心。
中身もこれがたった一人の作品集?と驚かされるほど、
多彩な画風・作風が展開されていた。
小説でも美術でも、とんでもない量産型の作家がたくさん出現している。
ひとりすら追いかけるのが困難なのに、それが何人もだと、
ほとんどお手上げだ。諦めが肝腎ということか。
「わたしは二百年生きるつもりだ。つまり、すべては途上である」
といったのは中村草田男とのことだが(寺山修司の本より)、
二百年という時間が与えられたとしても、すでにこの、
多方面に量産され続ける世界に追いつくことは不可能だろう。
でも次から次に読んで、見て、聴いて、
多少なりともレパートリーを増やしてゆくんだろうけど。
戸を止める壺の倒れて春まだき (しょっち)


むむむ…このところ、寺山修司だのブルトンだの啄木だのが
出てくるだけあって、俳句が…芸術っぽいぞ。
どんどん差が開くわ。
ド〜ジョ!

包み焼きの中身はなあに春日和(玉)