おイナリさん

首筋を零度の風が吹き抜けり
暖房が効きすぎて、暑苦しい。それでなくとも春眠を誘われる季節、
生温かい空気に背を向けて、マフラーもせず外へ出る。
この二日ほど、今年最大とかいう寒気団が来てるそうで、
冷たい風に眠気が一瞬で吹き飛ばされる。
出たついでに古本屋を少し見て歩く。
店先のサービス品というか、見切り品というか、2冊百円ないし4冊まで百円、
といったところをざっと見てゆく。
せんだって、そういうので今東光の『悪太郎』(新潮文庫)を買って読んだら、
やたら面白かったのだ。ついその前段の『悪童』も捜して読んでしまった。
公園のベンチで一休みしたら、フユザクラなんていう木から花びらが散っていた。
夜、飲み屋ではテーブルに置かれた大きな鉢に、
そうとう太い梅の枝が何本か無造作に投げ込まれ、見事に花開いていた。
暖房のせいで、あっという間に花が開いてしまうのだという。
帰ったら玉キツネがイナリズシを作ってた。これがたまらなくうまい。
三つ続けてほとんど飲むようにして食ってしまった。(しょっち)


テーブルにおいなり三つ春の夜  (玉)